喫茶エスプリ 1983
3階の院生用の研究室にはクーラーがなく、真夏の昼下がりになると心地よく論文をまとめるためと称して、避暑地を求めるように車を飛ばしてみんなと喫茶店に逃げ込むことがしばしばでした。写真はそんな避暑地の一つ、改装前の喫茶エスプリ(現/エスプリ珈琲店)の一隅です。
ちょうど、その頃に不思議な音楽と出会いました。ラジカセから流れてきたペンギン・カフェ・オーケストラの曲です。
3階の研究室から見える緑眩しい午後、初めて聴いた時の印象を鮮明に覚えています。ありふれた今という時間にその場所にいることが、輝くような時間になった瞬間でした。
たとえ悲しいことがあっても、そんな時間さえも共有するように溶け込んでくるその旋律は、今見えている風景を永遠の風景に変えるように、そして、やがて生まれ変わって見るであろう世界の風景のように、今でも穏やかに心の中に流れてきます。
cutting branches for a temporary shelter / penguin cafe